第1章

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. 「―――うぅっ……」 爪先の辺りを何かに突っつかれているような感覚をきっかけにして暗闇へ沈んでいた意識が浮上し、またしてもうつ伏せになっているらしいボクはゆっくりと目を開ける。 だが視界に映る光景は何処か薄暗く、周囲の様子もぼんやりとしか把握できない。 それでもなんとか自身の周辺だけは視認出来たため、うつ伏せになっていた体を起こしてその場に座り込んでみる。 「ここって……洞窟、なのかな……?」 体を起こした際に周囲を再度確認してみたところ、自身が岩壁に囲まれた水辺に座り込んでいる事がわかった。 どうやらあの崖から川へと落下したボクは、そのまま水に流されてこんなところにまで来てしまったらしい。 ……まぁ、こんなところとは言っても相変わらずここが何処かなんて事はわからないんだけども。 とりあえず水の中にいる魚らしき生き物に爪先を突っつかれるのがいい加減鬱陶しくなってきたため、その場で立ち上がったボクは出口のようなものが無いかと洞窟の中を歩いて探し始める。 発光する事で周囲を照らしている苔を頼りに地味に広い洞窟の中をうろつく事数分、岩陰にあった出口へと繋がっていそうな通路を発見した。 しかもありがたい事に発光する苔(面倒なので光苔とでも呼ぶ事にする)は通路の中にも点在しており、今いるこの洞窟と同様に歩いたりするのには問題無さそうである。 そんなわけでボクは出口を求めてその通路の中を進み始めたんだ。
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