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音もなく置かれたカクテルグラスと赤ワイン。
小さな音をたてて、乾杯をした。
「大丈夫ですよ、藤原さん。
私、本気で受けとめていませんから」
一口飲んだ後に、若干からかわれて疲れている顔の彼に向かってそう言った。
「私に魅力がないのは本当の事ですし。
仕事が忙しくて婚約を解消されてしまった藤原さんと違って、私は本当に何も気付かずに騙されていたマヌケですから」
なるべく暗くなり過ぎないように明るく言ったつもりだけど、なかなか…自分で自分の傷をえぐるのは辛いものがあるなぁ…
ワイングラスをトンッと置いた藤原さん。
フッと軽く笑うと…
「あなたがマヌケなら、私もマヌケですよ」
「えっ?」
「私も他所で男を作られていましたから。
しかも、私と付き合ってから間もなく関係をもっていたらしいですから、私は殆どの日々をマヌケに過ごしていましたね」
絶句…しかなかった。
そう、なんだ。
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