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藤原さんがそっと持ち上げて渡してくれたのは、元婚約者が置いて行った指輪の箱。
見るだけで、怒り、苦しみ、悲しみの感情が奥底から湧き上がってくる。
「いらないものですか?」
「そう、ですね…」
「ならば、私が預かっておきましょう」
「えっ?えっ?えっ!」
「あなたの心が落ち着いたら、お渡しします。
家にも持って帰りたくなんかないでしょう?」
…確かに、家になんか持って帰りたくない。
こんなもの家に置いてどうするっていうの?
奴が新しい女と仲良くしてるっていうのに、私は付けることもなかった指輪と睨めっこして、一人寂しい一夜を過ごせって?
冗談じゃない!!
「ありがとう…ございます…
でも、どうしてそこまで?
弁護士さんだからですか?」
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