サムシング・ブルー

6/93
前へ
/97ページ
次へ
両手を手で覆い、涙だけは誰にも見られないように声を押し殺して泣いた。 悔しい、辛い、悲しい… 色んな感情がこんがらがるし、ここは外なんだって理解して恥ずかしい思いもしてるし。 全部、元婚約者のあいつのせいだ! 何で、あんな奴のこと好きだったんだろう… …もう、最悪… その時、スッと出された綺麗に四つ折りにされた青色のハンカチ。 顔を覆っている指と指の間から、少しだけ見えた。 「どうぞ」 声は前から聞こえてきた… 前から… 前から?! 手を顔から離して、いるはずのない前の席に座っている人間を見た。 「あなた…誰ですか…?」 「誰でもいいでしょう。顔を拭きなさい。」 な…に?この人。 てか、なんでこんなに偉そうなの? 「女性が一人で店内で泣いているなんて、滑稽しかないです。 私がいる間に、さっさと泣き止みなさい。」
/97ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3462人が本棚に入れています
本棚に追加