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「…お前さ、俺と会う時、化粧してくんのやめれば?」
アイメイクはほとんど落ちている。
「え、やだ。後で直します」
「別にいいだろ。どうせまた泣くし」
「…泣きません」
「泣く」
「泣きません」
俺は少しバカにしたように頷きながら笑った。
「なあ、チョコ食おうぜ、チョコ」
「あ、うん。…すごい画期的なチョコを見つけたんですよ。薄いチョコの中にスライスアーモンドが入ってて…」
稲森がバッグの中を漁(アサ)る。
「それって画期的なのか?」
「えーー。すごいですよ」
メイクの落ちた少し幼い顔で
稲森は笑った。
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