無欲な者

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戦闘史を真面目に聞く者は少ない。 大抵の生徒が退屈だと思うからだ。 そう思う者たちは普段ノートを取る片手間、内職、と称される戦闘史とは関係のない他のことをする。 もしくは机に突っ伏し夢の世界に浸る。 ここは、政府直営の兵士育成機関。存在すらあまり公にされていないが、だからこそ選りすぐりの戦力が集ってくる。 四階の南に位置するこの教室の窓際の最高段で堂々と突っ伏し眠るのは、高等部 3年 成瀬 明也(なるせ あきや)である。 窓際の彼の席は昼寝に最高な格好のポジションで、むしろ戦闘史などという科目は寝るために作られた学校側のなんらかの優しさだ、と大抵の生徒は勝手に解釈している。 …今日も滞りなく午前の3コマの終了を告げる音が高等部に鳴り響く。 まあ、いつもなら彼は仲間と共に屋上の一角に陣取り談笑しながら昼食を食べていただろう。 だが、今日はそうもいかないのだ。 呑気に昼食を食べている場合ではない。 彼を含めた数名は各々“自らを守り敵を殺す”武器を手にクラスに1つ与えられている階段教室から飛び出た。
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