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「んだよ…意味わかんねぇ」
不思議そうに首を傾げながら銀は夜依の後を追う。
残りの3人も後を追ってコロシアムの観客席に出る。
するとどうだろう。
福井という男とその取り巻きがコロシアム内に陣取り、組手をしている。
「あーぁ。確かにヤベェわ」
銀は合点がいったように乾いた笑い声を上げた。
夏実や童子、夜依は明也を見やった。
明也は相変わらずの無表情だ。
だが、常に周りにいる人間にとっては分かり易いくらい感情が渦巻いていた。
明也は急に観客席の中央に設けられた踊り場から約10メートル下の舞台に飛び降りた。
落下の勢いを殺しきり、
シュッ、という音と共に着地する。
残りのメンバーも同じく飛び降り、明也の後ろに控える。
明也たちに気づいていなかった観客席にいた生徒もこれには気づき、口々に囁き合う。
「おい、成瀬一派だ」
「今日は幹部全員そろってお出ましか」
「やっぱり明也様かっこいー!」
銀はニヤリと笑って明也の言葉を待つ。やはり、絆というものは深い。明也を軸に全てが回る。それは服従ではなく、尊敬、信頼、である。
「…何でお前らがここ使ってんの」
この怒りを噛み締めたような口調に銀と童子の口元はつり上がる。
(アキが抑えるなんて意外だな)
(なる、無駄にキレるん嫌いやからな。怒鳴ってエネルギー消耗するとかもったいないやろ…っククッ)
童子は柄にもなく笑いを噛み殺した。
「ぁあ"?予約なんかあったのか?悪りぃ。気づきもしなかったよ」
福井という男は周りの取り巻きと共に下品な笑い声を上げた。
その上がった笑い声にかぶせるように鋭い笑いが上がる。
「ギャハハっ…ヒィ…ハッハッハ!」
「っく…ククッ…ハハハっ…クククッ…あ"ー。もうやめてぇや。なる、そんな性に合わんことせんといてくれるか。こっちが笑い死にするわっ!」
腹を抱えて涙が出るほど笑う2人に福井という男は呆気に取られた。
「はぁーあ。もう笑った…笑った。こんなに笑ったのは久しぶりだぜ」
笑い疲れたようにそう言う銀の目は殺気の篭った冷徹さを帯びた。
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