ようこそ、僕のセカイへ

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青いパンプスは、黄色い「スタート」マスにいた。 奥へと続くマスに比べて大きく、文字が細かい。 マスから出ないように動きながら、すべての文字を読んだ。 前半はひらがなを用い、簡単な言葉で書かれており、後半は、ない傷口を抉るように怖さを隠した明るい文章。 茶色の丸ゴシックは丸みを含まず、わたしにフィクション感を突き刺した。 目がなければ、耳がなければ、わたしは笑って泣いていただろう。 ただ、わたしには目も耳もある。 口も足も手も鼻も、髪だって、体だってある。 だからわたしは笑わなかったし、泣かなかった。 笑えなかったし、泣けなかった。 微動だにできなかった。 そこに、“僕”が、追い打ちをかけた。 .
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