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「時遅く、役人が彼等に必要な物を与えて帰してしまった」
「まあっ、間に合わなかったのですか」
「これは藤田東湖先生が18歳の頃の出来事です。良いか悪いか、水戸藩の優れた警備と役人の穏便な対応で、この時は、これで済みました。さて、問題はこの後です。薩摩藩領に宝島という小島が有るのです。この島で悶着が起こった」
「薩摩藩領のたからじま? 遠いのですか?」
「ええ。遠いです。西南方向へ、およそ400里です」
「400里も!」
「この島へイギリス船が立ち寄って、島民に牛を譲渡するように要求したのです。しかし、現地の郡司は、これを拒否した。為に、30人ほどのイギリス人が島に上陸し牛3頭を強奪した!」
「そんな事を! 盗賊ではないですか!」
「そうです。盗賊です。この為に横目(監査役)の吉村九助が在番所でイギリス人1名を射殺した。流人であった2名の武士も争いに参加したと伝えられています。この事件がひとつの要因となり、翌年の文政8年(1825年)に、幕府は【異国船打払令】を出したのです。以後、異国船は、ことごとく打ち払えと」
「まあっ、そんな事が! 牛を売って下さいと言えば済んだものを」
「いえ、商いの話ではないのです。更に、この事件の起こる16年前に、イギリスは長崎・出島でも大悶着を起こしているのです」
「今度は長崎? そこも遠いのですね?」
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