紫陽花の咲く庭で……

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煙草に火をつけて、何度かふかしてみた。 それなのにいつものリラックス感は得られない。 それどころか妙にイライラして、ちっとも落ち着けない。 窓に打ちつける梅雨らしくない雨。 バチバチと窓を叩く雨粒が感情を揺さぶる。 なんだって、俺は…… 自分には無い、何かを慈しむ気持ち。 それを目の当たりにした時から引っ掛かっていた。 「くそっ……」 まだ随分と残っている煙草を灰皿に押し付けて、俺は書斎を飛び出した。
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