紫陽花の咲く庭で……

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××××××××××××× ずぶ濡れの女を脱衣場に押し込んだ。 「あのっ……」 「風邪でもひかれたら困んのはこっちなんだよ」 「でもっ……」 「うっせーな。さっさと入れ。俺が風邪ひくだろ」 脱衣場の引き戸をけたたましく閉めると女の声は収まった。 ほんと、何やってんだ俺。 自分のとった行動が信じられなくて、その場にしゃがみこんで頭を抱えた。 「あの……」 懲りない声が戸の向こうから聞こえた。 「だから、さっさと……」 「着替えが……」 「はぁ?荷物、持って入っただろ」 「その……バッグごと濡れちゃって……」 「……」 俺は首の後ろを掻きながら開き直った。 「何か用意しとくから、とっとと入ってこいっ」 いちいち真剣に向き合うの、疲れた。
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