紫陽花の咲く庭で……

22/80
前へ
/88ページ
次へ
「ちょっと、壱琉ーっ」 勢いよく開かれたドアと共に喧しい声が頭に響いた。 「うるせーな」 俺が睨みをきかして振り向くと、咲島を後ろから抱き込んでいるデカイ女。 「なによっ、こんな可愛い子だったの?」 「は?」 「もうっ、電話の声だけでも可愛かったのに、こんなミニサイズだとは思わなかったわ」 「お前がデカイだけだろ」 「あんたに言われたくないわよ。図体だけデカイくせして」 「その言葉、そっくりそのまま返す」 「あーぁ、ほんと可愛くない男。ねっ?えっと……」 「あ、咲島紫ですっ」 「あ、そうそう紫ちゃん」 すでに咲島を手懐けているのは俺の担当編集者、西山広美。 咲島を雇った張本人だ。 「壱琉に変なことされてない?」 「してねーよ。てか、するわけねーだろ。こんな、ちんちくりん」 咲島を洗脳しようとする広美を追い払う。 「なんだよ?」 俺をギッと睨んだ広美の目。 当然のことを言って何が悪い。
/88ページ

最初のコメントを投稿しよう!

711人が本棚に入れています
本棚に追加