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「ちょっと、壱琉ーっ」
勢いよく開かれたドアと共に喧しい声が頭に響いた。
「うるせーな」
俺が睨みをきかして振り向くと、咲島を後ろから抱き込んでいるデカイ女。
「なによっ、こんな可愛い子だったの?」
「は?」
「もうっ、電話の声だけでも可愛かったのに、こんなミニサイズだとは思わなかったわ」
「お前がデカイだけだろ」
「あんたに言われたくないわよ。図体だけデカイくせして」
「その言葉、そっくりそのまま返す」
「あーぁ、ほんと可愛くない男。ねっ?えっと……」
「あ、咲島紫ですっ」
「あ、そうそう紫ちゃん」
すでに咲島を手懐けているのは俺の担当編集者、西山広美。
咲島を雇った張本人だ。
「壱琉に変なことされてない?」
「してねーよ。てか、するわけねーだろ。こんな、ちんちくりん」
咲島を洗脳しようとする広美を追い払う。
「なんだよ?」
俺をギッと睨んだ広美の目。
当然のことを言って何が悪い。
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