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「あのっ、勝手に入っちゃってごめんなさいっ」
立ち上がって振り返るなり深々と頭を下げる女。
少しウェーブがかった黒髪が顔を隠す。
「不法侵入?」
「あ、いえ……チャイム鳴らしたんですけど……」
女は顔を上げると、躊躇いがちに玄関の方向を指さした。
「あれ、壊れてるから」
「あ、えっと……そうなんですか」
「で、あんた誰?」
「あっ……」
女は慌てて背筋を伸ばすと乱れていた髪を耳の後ろに掛けた。
「今日からこちらで家政婦として働かせて頂きます、咲島紫です」
そう言われても……
しばらく考えて、ようやくぼんやりと思い出してきた。
そう言やアイツ、家事一切を放棄した俺に「少しは人間らしい生活をしろ」とか言って、家政婦を手配するとか言っていた気がする。
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