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あの後、広美が帰っても夕飯を一緒に食べてもお互いに触れなかった話題。
もし、弁解の機会を与えられたとしても俺は何を言うつもりでいるのか自分でも整理がついていない。
例えば本当のことを伝えたとして、もし拒まれたら?
それこそ咲島はいなくなってしまうんじゃないか。
そう思うと踏み出せずにいた。
時計の針はとっくに日付を変えていて、明後日には上げないといけない原稿も停滞していた。
気分転換にと書斎を出た俺は廊下を歩いた。
リビングから漏れる光。
胸騒ぎを隠して、その光に誘われるふりをしてドアへと近づいた。
僅かに開いた隙間から聞こえた声。
ドアノブに掛けた手が止まった。
『……帰るね』
……どこに?
お前が帰ってくるのはここじゃないのか……
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