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咲島の声が止むのを見計らってドアを開けた。
「あっ……」
なぜか握りしめていた携帯を慌てて背中の後ろに隠した。
もう、確定なのだろうか。
痛む感情を押し潰して平静を装った。
「まだ起きてたのか?」
「あ、もう寝ますよっ」
いろんなことに掻き乱されているのは自分だけなのかと思うと、笑顔の咲島に苛立つ。
「悪いけど、コーヒー入れてくれる?」
「えっ、はい……」
咲島が壁の時計をチラッと見たのが分かった。
「こんな時間に?」とでも言いたかったのだろうか。
「書斎に持ってきて」
今から寝ると言っている咲島の仕事を増やしたりして、自分で自分の惨めさを膨張させた。
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