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「この本、知ってるか?」
ずっと目につかない場所に置いていた、淡いピンクのハードカバー。
最後に触れたのがいつなのかを思い出せないくらい過去の産物を紫に手渡した。
「あっ、これ知ってますっ。高校生の時に夢中で読みましたよ」
手にした本を両手に握りしめ、懐かしそうに見つめる紫を後ろから慈しむ。
「それな、俺が書いたんだよ」
「えっ……」
「って言うか、俺が考えたってことになるのか……」
紫が表紙に見入っているのが分かる。
そりゃそうだよな。
著者が俺じゃないんだから。
「そいつ、俺の親友だったんだ」
表紙に書かれた名前。
時代の寵児と持て囃された代償はあまりにも大きすぎた。
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