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「恨んだり、憎んだりしようと思えばできたはずなのに、宮城さんはそうしなかったんですよね?」
紫は俺の手をゆっくりとほどいて、腕の中から抜け出した。
そして、ゆっくりと俺と向き合ってくれた。
「いつかまた、昔みたいな3人に戻りたいって思ってるんですよね?」
あぁ、そうかもしれない。
あいつの犯した罪を一緒に背負っていくって決めた広美だって、俺の顔を見るたびに苦しかっただろう。
3人共が立ち止まったままだったんだ。
「私も後悔はいっぱいあります。でも……」
そこまで言うと紫は下を向いてしまった。
「でも?」
意地悪とかじゃないんだ。
ただ純粋にその続きを聞きたかった。
「後悔することが辛くないんです。確かに間違ったことをしてきたけど、そういう自分を受け入れられたって言うか……こうして好きな人と一緒にいられるから」
そうか。
前に進むってそういうことなのか。
柔らかく微笑む紫が愛しくて、腕を引いて引き寄せた。
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