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酷く臭い匂いがする。鼻が曲がってしまいそうな程に臭い匂い。
その正体は人間の血や臓物や汗が混じりあった匂いだ。
それもそのはず、部屋の中やそれに繋がる通路には数十は下らない幾つもの死骸が転がっているからである。
そしてこの死骸に眼もくれる事なく周りの人々は今まさに殺し合いの真っ最中であった。
誰もかもが自分が骸の仲間入りにならないためにも、ある者は刀を握りまたある者は槍を握りしめてそれを振るう。
皆が声を荒げその手で目の前の者を切り捨てるこの光景はさながら地獄であった。
「中将様ぁ!!京都所司代様が討死なされました!!」
「狼狽えるな!!急ぎ生き残りを集めよ!!」
「敵を押し返せ!!中将様を御守りするのだ!!」
そしてこの地獄の中に自ら刀を振るい、中将と呼ばれるその武者こそ織田信長が嫡男たる織田信忠であった。
信忠もまた周りと同じように眼につくものは全て斬り伏せると言わんが如く敵を討つ。
「信長公が嫡男信忠とお見受けいたした!!貴殿には此処で手柄となってもらう!!」
そんな信忠の前に大柄の男が槍を突いてきたが、彼は慣れた手付きで槍を弾き飛ばして流れるように大柄の男の首を撥ね飛ばす。
「おぉ!!見事な舞でありまする!!」
「世辞はいい、次が来るぞ新介!!」
「御意に!!」
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