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「お……鬼じゃ!!こいつ等は鬼の集団じゃぁ!!」
1人の敵兵が全身に返り血を浴びながらも、拭う事なく次々とまた人を切り捨てていく信忠に指差して鬼だと叫ぶ。
「まったく……どちらが鬼だか」
そしてその叫び声を耳にした信忠は悪態をつけるように呟いた。
そもそもこの殺し合いのきっかけは数時間前に遡る。
天正10年の6月。つまり1582年に明智光秀が謀叛を起こして世にいう本能寺の変が引きおこった。
光秀は織田家家臣の中でも有数の者であったが、突如として牙を剥き本能寺に居る信長に襲撃をかけた。
その光秀謀叛の知らせは、本能寺の近くに建つ妙覚寺に居た信忠の耳にもすぐに入る事となる。
信忠はすぐに救援に向かうも、時既に遅く信長死没の報が飛んできた。
そして信忠はこちらにも迫り来るであろう明智の兵に対抗するために最寄の城であった二条城に籠り今に至る。
「鬼と言うなら鬼と成ろう……者共殺せぇい!!声を荒げぃ!!」
「おおおぉぉぉぉぉ!!」
信忠の気迫は留まる事を知らなかった。まるでただの案山子を一刀するかの様に一心不乱に明智兵を叩き斬る。
そして将が気迫を見せれば、共に戦う味方にもそれは伝染する。数では劣勢に立っている信忠であったがまさに気迫が違った。
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