終わりと始まり

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はっきり言って信忠率いる馬廻り衆と明智の雑兵ではまるで格が違った。 剣術の腕は勿論だが何より心持ちが違う。 明智の雑兵達は元々農民が戦に徴集されただけの者達ばかりであり、信長が死んで勝ち戦なったというのにこんな場所で誰も死にたくはなかった。 逆に信忠の兵達のほとんどが生まれながらの武士。彼らの心構えは明日生きる為ではなく今日死ぬ為に戦っている。この根本的なやる気の差がある。 信忠の兵達は1人で明智兵の3人分の働きをしていた。 しかしとあるきっかけで、この勇猛果敢な信忠の兵達の勢いは急遽止まることとなる。 「ぬぅ!?まさかあやつ等この密集の中で撃つ気か!!」 そのとある物には信忠の眼にも飛び込んだ。そのある物とは火縄銃、いくつもの火縄銃の構えた明智兵達が10mほど先にいた。 「撃えぇぇぇ!!」 火縄銃を持つ敵は遠く離れた場所にいる為にいかに武芸達者な信忠兵とて対処のしようがなく、いくつもの轟音と共にその火蓋は切って落とされる。 そしてあろうことかこれは、信忠達の気迫を怖れて敵味方関係なく放ったものであった。 意思持たぬ鉄の鉛はただ真っ直ぐ飛んで行き、当たった者に悲痛の叫びを出させる。
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