継がれしもの

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関ヶ原の各地で大規模な戦闘が勃発し始める。 だが前回と大きく違う点は、朝倉軍が撤退中であるが故に守備兵が少なくなっており、逆に相手の撤退を確信した織田軍は兵を出し惜しみなく信長自身も前に歩んでいる事だ。 攻撃目標は所要街道の制圧に柴田勝家、南天満山には滝川一益、北天満山では織田信忠と丹羽長秀が攻勢を仕掛けていた。 そして長秀が己が率いる軍勢の前に立ち軍配を翻し上げて命令を叫ぶ。 「我ら丹羽の勤めは二つだッ!!一つは北天満山の突破、もう一つは信忠様が突撃しない様に監視する事だッ!!」 振り上げた軍配を勢いよく信忠へ向かって突き出した。 「おい、私を何だと思ってる。躾の無い獣じゃあるまいし」 「よいかッ!?信忠様はぜっっったいに、勢いに任せて突っ込むだろうから、何としても阻止しろよッ!!」 「……これ不敬だろ、なぁ、新介?」 「概ね妥当な判断でしょう。流石は丹羽様」 信忠は長秀からの言われ様に思わず顰めっ面になるが、鎌田新介にも同じ事を言われてしまい頭を抱える。 「胸に手を当てて考えて下さい。某にとっても信忠様は後方に居てもらいたいのですが……」 「……もしかして、呆れられてるのか?」 「某からは何とも申せませぬ」 「……ぇえ」 そもそも今までの信忠の行動は、姉川の戦いで突撃し、宇佐山の戦いでも突撃し、岩村城の戦いも突撃し、甲斐の国へ突撃している。常に身を共にして戦場を駆けた新介にとっては、いい加減に大大名の後継者らしい行動をしてほしくもあって苦言を申す。 だが正論そのものな為に、信忠は一切として反論など出来はしなかった。
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