継がれしもの

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「我ら浅井を舐めんなよ、ゴラァァッ!!」 「ぶっ殺してやるわ、織田の豚ども!!」 南天満山を防衛するは浅井軍の将たる赤尾清綱。浅井家は朝倉家と盟約を交わしているとはいえ、所詮は他所の戦であるが故に当たれは易々と崩れるだろうと誰もが予測していた。 だがしかし、予測とは裏腹に士気は高く数に劣っていようが織田軍の攻撃を悉く撃退していたのである。 その理由は、清綱本人が最前線に足を運んで指揮を執っており、自ら柵から身を乗り出して弓を引いていたからであった。 「此処を抜かれれば浅井の未来も潰えると心得ろッ!!我らには防御陣地が健在なのだッ!!」 この戦で敗北すれば、織田家は間違いなく朝倉家を許さないであろう。ここまで事が大きくなってしまった以上、最低でも義景の首を落とさなければ収集が効かなくなってしまっている。 だが義景の首で事態が収集すると、運が良ければ浅井家は存続を許されるかもしれない。しかしそうなっても、浅井長政と嫡男の万福丸は処され、天下泰平後には軍事縮小を理由に浅井家が取り潰されるのは眼に見えていた。 もはや浅井家には妥協した生を取る道などはないのだ。 己が命を投げ捨てても守るべく、死兵となり持てる全てを振り絞って相手を殺す。その覇気に圧倒されて、大局が決して勝ち馬に乗りたい丹羽兵は狼狽してしまう。 「やはり浅井の勇兵は侮れんな。行けるか、長可?」 「無論で御座います。父上から継がれし、我ら森家の忠義をとくとご覧あれ」 「ならば命ずる。赤尾清綱を討ち、この戦に勝利を飾ってみせよ」 「承知ッ!!この森勝蔵長可、大手を振って罷り通るッ!!」 しかし信忠の横に並び立つ勝蔵改めて森長可は一切として怯む様子を見せずに進軍を開始した。
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