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景健は5人の護衛だけを付けて北天満山へ向かっていた。
この少ない護衛は、南天満山も苦戦を強いられており兵が割けないのと、迅速性を重視した訳であって行動自体は間違えてはいない。だが結果的に迂闊となってしまう。
「景健様ッ!!前方に織田兵、凡そ40ッ!!」
「構わん!!突っ切るぞ!!」
道中で防御陣を突破していた織田兵の一団と衝突してしまう。しかしこれを迂回して避ける時間も一時引き返す時間などありはしなく突撃を開始する。
そして景健は織田兵に気が付かれる前に先制攻撃を仕掛けて突破を図り、数十mばかりの道を抉じ開ける為に幾度も槍を振るって切り抜けた。
列を乱して混乱する織田兵を後ろ目に馬を走らせて振り切る景健たちであったが、ここでまたしても重大な問題に直面してしまう。
景健が体を仰け反らし、そのまま馬から転げ落ちて地に伏っしてしまった。
「景健様ッ!?御無事ですかッ!!」
「あ、頭から落ちたぞ!!生きてるのか!?」
この突然の事態に随伴していた朝倉兵は慌てふためいて駆け寄るも、景健の脇腹からは大きな刺し傷があり、目も当てられないほどに血を流していた。
その理由は先ほど接触した織田兵から一太刀を受けており、ここにきて崩れ出してしまう。
もはや景健は意識が無くとても弱々しい呼吸で危険な状態であった。このまま北天満山へ向かおうが、無駄に死んでしまうのは眼に見えてしまっている。そしてこの姿を見て朝倉兵の一人が口を小刻みに震えさせながらとある言葉を言う。
「……景健様を御連れして退却するぞ」
朝倉兵の一人が言った言葉に周りは沈黙して間を置いてしまうが、目の前の昏倒している景健を見て止む負えないと判断してしまい退却を開始した。
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