継がれしもの

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所変わって天満山の麓では、直隆が100名ほどの直属部隊を引き連れ遊撃隊として暴れまわっていた。 だが直隆とて単なる暴れ牛ではない。遊撃隊として戦況を見極める彼の目にも関ヶ原に於ける戦線はもはや敗北してしまっていると解りきっている。 北天満山には既に織田の旗が上がってしまっており、南天満山では次々と防御陣が破壊されている。挙げ句に街道の部隊は包囲されつつあり、全滅も眼に見えてしまっていた。 「ふっ……潮時か」 この現状に直隆は思わず笑ってしまう。 「真柄様、御味方は総崩れであり完全に制圧されるのも時間の問題でしょう」 「わーってるよ」 家臣の言葉に直隆はひらひらと手を振りながら相槌を打つ。 そしてこの姿を見て家臣は小さく笑った。 「随分と楽しそうですね、真柄様」 「テメェらを付き合わせて悪ぃが、結構楽しんでる」 「でしたら最後にする事は一つですね」 「あったりめぇだ」 直隆は太郎太刀を引き抜いて部隊の前に馬を進める。そして剣先を金の唐傘が立つ陣に向かって突きつけた。 金の唐傘は信長本人の存在を示す旗印であり、即ちそこに織田軍の総大将が居るという事である。 「よぉく聞け者共ぉッ!!俺達は負けたッ!!」   そして直隆はハッキリと朝倉軍の敗北を公言したが、真柄兵は誰一人として動揺を表さずに真剣な面立ちで動じずに聞く。 「だが俺達は死んでいるかぁッ!?もう戦えぬかぁッ!?」 「殺すッ殺すッ殺すぅッ!!!!」 「ならば武器が持てるなら刺し殺せぇッ!!馬に乗っているなら踏み殺せぇッ!!腕があるなら殴り殺せぇッ!!足があるなら蹴り殺せぇッ!!口があるなら噛み殺せぇッ!!」 「殺せッ殺せッ殺せぇッ!!!!」 直隆は家臣の闘志に感化されて再び笑みを浮かべる。 「敵を哀れな蟲の如くに殺せッ!!敵を脆い藁の如くに殺せッ!!目標、前方ッ!!殺し尽くせぇいッ!!」 そして最後の突撃が開始された。
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