継がれしもの

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金の唐傘の元には信長が指揮を執っていた。 関ヶ原戦線に於いて誰もが織田方が勝利するだろうと確信する最中、信長は依然として臨戦態勢を崩す事無く大局を見据える。 そしてこの陣に向かい、2mを越える男が大柄の黒鹿毛の馬に股がり五尺三寸の太郎太刀を背負い突撃する姿を見て、ゆっくりと深呼吸を取りつつ緒戦で受けた奇襲を思い返す。 「旗印は赤地に金の木瓜ッ!!真柄の物だと思われますッ!!」 「真柄か……決して侮るな、これを止めれねば大局は覆ると心得ろ!!」 「御意ッ!!」 織田兵は迎撃体制をとるべくすかさずに隊列を整えて槍衾を揃える。 そして織田兵は突撃してくる真柄騎馬兵を突き崩し叩き落とすが、一向に止まる気配を見せずに押し通す。 「火縄隊、準備完了いたしましたッ!!」 「放てぇい!!」 だが槍兵の後ろには数十人の火縄銃を構えた織田兵が準備を整えており、次なる攻撃を敢行した。 広く展開された一斉射撃は、けたたましい轟音を響かせて真柄兵に襲いかかる。 鉛球は先頭を駆ける直隆の黒鹿毛の馬にも幾多の風穴を開けて撃ち殺した。 またこれにより多くの兵が倒れ逝くが、ある者は仲間の屍を踏み越えて足を止めず、ある者は馬から転げ落ちようとそのまま織田兵に斬り込む。 「我らなどに構わず、どうか足を歩ませて下さいませッ!!信長は目前でありますッ!!」 「先に地獄で待ってろッ!!俺様も直ぐに行くッ!!」 「お先に失礼致すッ!!」 負傷して走れなくなった真柄兵は、迷う事無く踏みとどまって死に逝く最後の一秒まで戦う事を止めずに突き進む直隆の背を見届けた。
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