己の天下

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関ヶ原にて朝倉軍は敗北した。だが景健はそれは理解したが、その前に解からない事があり問う。 「……待て、そもそも此処はどこだ?」 朝倉軍が関ヶ原から撤退した理由は、上杉軍の危機に晒されている本国を救援する為に行動を起こした筈である。 それだというのに、何故に目を覚めたら見覚えもない室内で寝ているのかと疑問を持つなという方が無理であった。 「それは、その……大嶽砦で御座います」 「大嶽砦ッ!?」 応えられた内容に唖然として思わず聞き返してしまう。大嶽砦は北近江の浅井家本拠地である小谷城から30分の距離にある支城である。 つまり朝倉軍は越前に帰国おろか未だ近江から出てもいないのかという事に言葉に出来ない程に動揺してしまい、その眼で確認する為に部屋を飛び出して外の様子を見に行く。 そして景健は外に出てすぐさま櫓に昇ると、標高495mである山からの景色が彼に現実を突きつけたのであった。 山の麓には数えきれない程の織田木瓜の旗が靡いており、完全に包囲されてしまっている状況である。だが何より驚いたのは、水色の桔梗紋と八咫烏が描かれている旗まで存在している事であった。 「きっ、桔梗紋に八咫烏だと!?どういう事だ、何故に明智と雑賀の軍勢が包囲に参加している!!」 水色の桔梗紋は織田家家臣の明智光秀を示す物であるのだが、彼の居城である坂本城は三好軍に襲撃されている筈であり、この場にいる筈がない。 更に八咫烏の家紋、これは石山本願寺が雇い入れた雑賀衆の物であるのだが、雇い主である本願寺は中立を表明する誓紙を朝廷に提出しているのだ。それなのに数千人もの雑賀の軍勢も見受けられていた。
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