終わりと始まり

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「中将様ぁぁ!?」 飛んできた鉛玉には信忠の胸にも当たり彼の甲冑と血肉を弾き飛ばす。 信忠はその体中に電流の様に走る激痛に歯軋りを立てるが、倒れずにその場に踏み込んだ。 「いけません殿!!御退り下さい!!」 「たわけが!!誰が手を止めよと命じた!!」 周りの兵達は撃たれた信忠を見て、慌てて後退の言葉を口にするが信忠は聞く耳持たず前に前進する。 そして前へ前へと踏み出して撃たれた傷など物ともせずに目の前の敵を斬り捨てた。 これを見て明智兵達はさらに信忠を恐れる。ただでさえ味方からの急な銃撃に混乱しているのに、撃たれた信忠本人が我先にと前に進み敵を斬り続けているのだ。恐れるなと言うのが無理だというもの。 「者共何をしておるか!?殺せ殺せぇい手を止めるな!!」 「ひぃ……にげ、逃げろ……逃げろぉ!!鬼に喰われるぞ!!」 「明智の兵を殺し尽くせぇ!!!!」 信忠の自身の身体が斬られようとも、自身の身体に火縄銃を撃ち込まれようともただ前を見て斬り込むその姿は誰の眼にも血に飢えた鬼に映る。 そしてこの鬼の前に明智兵は蜘蛛の子を散らしたかのように逃げ出した。
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