甲斐の虎と越後の龍

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一斉に突撃を開始した上杉軍は荒々しい叫び声と共に大手門目掛けて走り出す。 さらにただ突撃を繰り返すだけでなく、足並み揃えた的確な猛攻に残党軍は押されてゆく。 「城門の閂に亀裂が入りました!!このままでは破られます!!」 「長様ぁッ!!北の櫓が焙烙玉により炎上、消火しきれませぬッ!!」 次々と報告される凶報に連龍の肩が震える。だがこの震えは恐怖によるものでなく武者震いであった。 連龍とて鶏塚合戦や乙ヶ崎合戦といった数多の戦いで武功を挙げた歴戦の勇士であるのだ。劣勢の中で活路を見いだし歯を見せる。 「狼狽えるな!!これは好機と心得ろ!!」 敵が全軍突撃を敢行したという事は、おのずと謙信の守りは薄くなる筈だ。故に連龍はこの隙を逃さぬよう気を引き締めた。 「死を恐れぬ者は儂と共に門前へ集え!!門が破られ次第、敵中突破にて謙信の首を獲る!!」 逆襲を決定した連龍は、目標である謙信を探し出すために櫓に昇り周辺を見渡す。 だが、どこを見渡しても謙信の姿は見えず頭を捻る。 「どこだ謙信……何処にいった!!」 「連龍様ッ!!騎乗した武者が単騎で向かっておりますッ!!」 捜索の最中に家臣からの報告に連龍は眼をやる。すると馬に乗り城壁に向かって駆ける武者の姿が瞳に映る。 そしてその姿を見た瞬間、全身の身の毛がよだち眼を見開く。武者は銀箔押張懸兎耳形冑を身に包んでいたのであった。 「総員、あの単騎駆けの奴を狙え!!あいつが上杉謙信だ!!」 連龍は己が眼を疑ったが、その武者のこそが上杉謙信その者だと確信し、血相を変えて叫び挙げた。
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