甲斐の虎と越後の龍

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城に謙信の侵略を許した後、落城までは瞬く間であった。 城壁を飛び越えるなど夢にも思っていなかった城兵は、突然の事に対応しきれず悉く蹴散らされ、大手門の閂を槍で一刀両断されてしまう。 それにより上杉兵が雪崩の如くに押し寄せて白兵戦に突入。数に劣り混乱を治めきれない事態に本丸へ退く事すら許されずに制圧された。 そして捕虜にされた残党軍は縛り上げられて一か所に纏められる。この集団の中には連龍の姿もあり、謙信は依然として杯を片手に持ちながら彼らの前に立ってとある事を問いかけた。 「長連龍といったか?貴様に問う、死を恐れぬ者は集えなどと吠えておったが如何なる真意か」 「武士たる者が死を恐れるか!!」 「ならば集うた者共も同じ心意気か?」 連龍の答えを聞いた謙信はにんまりと笑い、それに呼応して上杉兵は何人かの城兵を槍で突き刺した。 前触れもなく喉や腹を抉られた者たちは、手足を縛られている為に傷口を押さえる事もできずに血を垂れ流しながら芋虫のように這いつくばり悲鳴を挙げる。 「貴様らは死を恐れぬのではないのか?それとも連龍だけでも期待に応じてくれるのか?」 「なっ!?何をする気だ!!」 連龍は数人の上杉兵により体を押さえつけられ頭も地に叩きつけられる。更に5,6人ほどの者が石を拾い上げて囲い詰めた。 「剥げ」 「やっら、やめろぉぁぉおおぉぉぉッ!!」 謙信の一言と共に、上杉兵は連龍の皮膚を肉を生きたまま石で削ぎ落としてゆく。 全身は瞬く間に紅く滲み染み、皮膚は爛れ落ち肉は抉られ骨までも浮き出てしまう。これほどの苦痛に言葉に出来ぬほどの声を挙げ、暫くしてそのまま絶命してしまった。 もはや原形すら留めておらず手も千切れる連龍だった物を見て、謙信は興味を失ったように溜め息をついて背を向ける。そして最後に命令を残して去っていく。 「残りもいらん」 命令と同時に再び悲鳴が挙がる。延々と悲鳴が続く、延々と決して残余は消えることなく。
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