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武田軍の総突撃に上杉軍の誰もが狼狽する。
彼らは武田家など信玄さえ抑えてしまえば、後はどうとにもなると考えていた。
理由として後継ぎは家内で諏訪の小僧と忌み嫌われている勝頼では、特に独立性の強い甲斐の国人衆は纏めきれないだろうと思われていたのだが、現実は予測を裏切りまったく逆に事が運んでしまっている。
勝頼は先の信濃反乱の折に、武力による解決ではなく対話による鎮圧を成し遂げる。もしも鎮圧が遅れてしまっていたら、本拠地で躑躅ヶ崎館は襲撃されて政務に深刻な支障が起こり、更に反乱軍は上杉家と結託して血で血を洗う闘争が起こっていただろう。
故に迅速かつ確実に反乱の鎮圧に成功させた事により、家臣から信を得られていたので武田家は最早信玄の一人だけではなくなっていた。
この点に関して、武田家は上杉家に大きな差をつけたのである。
「目標ぅッ!!常福寺に居ると思われる上杉謙信ッ!!この風林火山の旗に続けぇいッ!!」
「応ッ!!応ッッ!!応ぅッッ!!!!」
そして勝頼は馬に跨りながら槍を大きく天に掲げ、常福寺に居る謙信を殺すべく道中の大門街道の上杉軍を蹴散らす。
街道の兵は突然の爆発により混乱を極めてしまっており、奇襲をまともに受けてしまい大損害を受けるどころか我先にと逃げ出そうとする者まで現れてしまい前も後ろも人々がごった返してしまう。
この好機に先鋒を務める武田家臣の原昌胤も攻勢の手を緩めずに目覚ましい功を積み重ねていたのであり、まさに怒濤の勢いであった。
だがしかし、戦場でとある者を見て思わず手が止まる。
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