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両翼の山県、馬場の軍勢は上杉軍を回り込むように側面を抑えるべく進軍していた。
そして前方には数は少なくとも、地の利を生かした高坂軍が堅く上杉軍を押し止めている。
「謙信様ッ!!足を御止めくだされッ!!このままでは横っ腹を叩かれる恐れがありますッ!!」
これに対して弥太郎は側面を奪われるのは、あまりにも危険と判断して謙信に一旦の追撃停止を進言するも、止まる素振りを見せずに依然として前だけを向かれる。
「……くっ、両翼の者は何としても敵を止めろッ!!」
本来なら追撃の足を止めて周囲の敵への迎撃に備えるべきであるのだが、謙信はそれを良しとせずにいる為に中途半端な処置しか成せなかった。
もはや弥太郎に出来るのは、中央突破を果たすか両翼の敵を抑え込んでくれるのを期待するしかない。
「無駄ァッ!!邪魔ッ、無駄ッ、邪魔ッ!!この昌景を止めれる者は誰も居らぬのかッ!!」
しかし半端な兵数での対応などで百戦錬磨の武田軍を止められるわけがなく、次々と突破されてしまう。
この快進に昌信は、次に後方の兵を全面に押し出して上杉軍の追撃を押さえ込み狼煙を上げた。
そして昌景と信房は狼煙を確認し、すかさず反転。次いでほぼ同時に上杉軍本隊へ攻撃を開始する。
かくして機動力を重視した武田軍両翼は迅速に敵の側面を確保し、包囲網を完成させた。
「全軍ん突撃ぃッ!!上杉を喰らい尽くせぇいッ!!」
「応ッ!!応ッ!!おおおぉぉぉぉぉッ!!」
数に劣る筈の武田軍に包囲された上杉軍は面を食らう。
そして前後左右からの怒濤の攻勢にさらされ、密集突撃中という逃げ場もなく反転すら儘ならない事態に陥ってしまった。![image=498428356.jpg](https://img.estar.jp/public/user_upload/498428356.jpg?width=800&format=jpg)
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