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弥太郎は敵味方入り乱れる乱戦の中、とある兵が突入してきたのを瞳に映す。
その者は身の丈130cmほどの小柄であるが、それに比例するように跨がる馬は類を見ない程に大きく、また武具は誰よりも赤く血に染めて多くの敵を切り捨てたのを物語る。
「山県源四郎昌景、見参ッ!!」
小柄の猛将こそ昌景その人であり、彼は縦横無尽に駆け回り次々と上杉兵を蹴散らして弥太郎の前に立った。
「これはこれは、花も実もある小島殿ではありませぬかッ!!」
「その呼び方はやめぇい、こそばゆいわ」
「気に入らぬか?最大限の称賛で称えているつもりであるのだが」
昌景は弥太郎を見つけると高笑いしながら声を掛ける。
二人は過去に川中島合戦の最中で一騎討ちを行い、互いに誰もが目を引く武芸を披露した後に引き分けに終えるという見知った者同士でもあった。
「まぁ、それはさておきだ。小島殿の後ろで怯えてるのが上杉の大将か」
弥太郎との挨拶を終えた昌景は、後ろで控える謙信に槍先を向けて挑発混じりな言葉を飛ばす。
それに対して謙信も目をぎらつかせて喰って掛かろうとするも、弥太郎とその直属の兵が進路を阻むように立つ。
「謙信様に指一本触れさせるなッ!!敵を駆逐しろッ!!」
どちらかといえば、謙信が業を煮やしての軽率な行動を止める方が骨が折れそうだと頭が痛くなるが。
そして指示と共に上杉兵は昌景に向かって駆け出した。
数多の兵が同時に襲い掛かるが、昌景の木曾馬が上杉兵を蹴り潰して押し進む。
そして狼狽する敵を赤子を捻るかの如く蹴散らして、笑みを溢す余裕すら残して切り捨てた。
「どうした上杉兵ッ!?越後には小島殿しか漢は居ないのかッ!!」
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