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「来られよ小島殿ッ!!さぁ、どうやらこの山県を止められるのは御主だけのようだぞッ!?」
「面倒な事に……ならば参るぞッ!!」
槍を振って血を払う昌景に弥太郎は馬を走らせて仕留めに掛かる。
弥太郎は得物を大きく構えて横に振りかざす。だが対する昌景は、待ってましたと言わんばかりに打ち返した。
「いいねぇッ!!手の痺れは生きてるって実感できていいねぇッ!!川中島を思い出すッ!!」
「よく回る舌だな、おいッ!!某は楽しんでいる暇なんざないのだよッ!!」
「小島殿も大変だなッ!!」
「テメェが死んだら、全部解決だよッ!!」
昌景は弥太郎の叫びを他人事のように聞き流しながらも打ち合いの手は止まらない。
軽口は叩いているが、頭は如何にして相手を殺すかと思念に占められ、手足は相手を穿つべく動かされる。
互いの槍が合わさる度に戦場全域に響き渡るほどの反響音が鳴り、武田兵も上杉兵も規格外の一騎討ちに唖然としてしまう。
だが数十合もの打ち合いの末、戦局は大きく動き出す。
弥太郎の槍が太刀打ちから真っ二つに圧し折れてしまい、開いた口が塞がらなくなってしまう。
「ガハハハハッ!!槍が折れちまってんぞッ!!安物使ってるからそうなるんだッ!!」
折れた槍を見た昌景は指をさして、勝利を確信し高笑いする。
そして止めの一撃を打ち込もうと自身の得物を振り上げたその時、ふと違和感に気が付く。
槍が異様に軽く、弥太郎も昌景の槍を見て腹を抱え笑っていた。
「阿呆ぅ、テメェの槍も折れてんぞッ!!」
「あぁッ!?この槍に結構金注ぎ込んでたんだぞッ!!」
昌景が自身の槍に視線を向けると、御自慢の武器が螻蛄首からポッキリと折れてしまっていたのである。
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