信玄最後の策

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武田兵は轟音と地響きを実感しながら身を低くして頭を押さえる。 鉄の塊が宙を舞い込い、眼にも止まらぬ速さで物や人を穿ち破壊せしめ残骸と死骸を晒す。 そして暫く砲撃は続いたが10発目が着弾したと同時に轟音は止まり、この意味を理解した昌信は戦慄を感じて身を塀の上から乗り出した。 「いつまで頭を下げておるか!!敵が来るぞ!!」 連続的に撃ち出された事により砲身が熱を帯びたのか砲撃が止まる。だが制圧射撃としては塩田城に十分な爪痕を残しており、上杉軍による正面門突破の直接攻撃が開始されたのだ。 そして武田兵は砲撃に怯んでしまっており、咄嗟の防衛配備に手間が掛かってしまい必要以上の接近を許す。 「狙いを定める必要はない!!各自準備が整い次第敵を迎え撃て!!」 「高坂様ッ!!外堀の上に梯子を掛けられていますッ!!射撃だけでは押し止めることは……」 「石なり壊された木材なり持ってこい、梯子を叩き潰せ!!」 塀の上から撃ち掛けや石を投げつけるも、完全に勢いを奪われた武田軍は次々と城に取り付かれて昇られる。 すかさず昌景の赤備も対応するべく敵に斬りかかるが、至る所で白兵戦まで繰り広げられ泥沼化してしまう。 「勢いが弱ぇな、国崩し何ぞに物怖じしてんじゃねぇぞッ!!昨日テメェらが望んでたぶち当たりだぞッ!!」 「殺せッ!!殺せッ!!殺し尽くせッ!!」 だが武田兵の士気事態は極めて高かった。前日まで上杉軍を直接殺したかった兵たちは殺意を表立ち武器を握る。 「上杉の屑共の血を啜ってやれッ!!身を抉ってやれッ!!骨をへし折ってやれッ!!臓物を押し潰してやれッ!!」 そして昌景の言葉と共に赤備は目をギラつかせて足を踏み出す。 「我ら日ノ本最強、赤備ぇッ!!前に進めぇいッ!!」
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