信玄最後の策

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「小島殿が活路を開かれ申したッ!!者共、突き進めぇいッ!!」 弥太郎の櫓破壊に沸き立つ上杉軍は、好機と心得て外堀に落ちる事など顧みずに次々と城に走り出す。 いくら武田軍の士気が高いとはいえ、上杉とて同じであり乱戦が治まらなかった。 「高坂様ッ!!正面門苦戦ッ、炎上した櫓も鎮火しきれません!!」 「抑えきれぬか……あれを持ってこい!!」 城壁と城門は半壊され櫓も燃え上がり正面門突破は時間の問題だった。それに対し昌信は口惜しさを残しつつも兵にとある物を持ってこさせる。 そして後方から武田兵は、大量の陶器を乗せた荷車を運んできて外堀に向かって投げ割った。 投げつけられた上杉兵は破片が刺さり思わず足が止まるが、それよりも中に入っていた液体が至る所に飛び散っており、この液体の刺激臭の様な悪臭に顔が歪む。 「稀少な臭水だぞ、たっぷりと味わうといい」 臭水とは今でいう石油である。それを大量に撒かれた外堀に火矢を射ち込まれ、大勢の上杉兵が燃え上がる炎に包まれて悲鳴を挙げた。 「そうら、御代わりもあるぞ!!上から油も撒け!!」 間髪入れずに、火の手を弱らせない為に次々と投げ入れ続けて追撃を掛ける。 上杉兵は臭水や油に滑ってしまい炎上する外堀から這い出ることができないまま燃やされ、城に取りついていた兵は孤立してしまい唖然として開いた口が塞がらなくなった。 「むざむざと殺されにきた馬鹿共を突き転がしてやれぇいッ!!」 前には武田兵、後ろには火災。狼狽する上杉軍の隙を逃さずに城から叩き出す。 これを見た弥太郎は、これ以上の攻城は不可能と考えたと同時に城壁に十分な損害を与えたと判断し後退命令出した。
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