一国二君

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上杉謙信の討死。 武田軍はこれを声大きく響き渡らせて瞬く間に伝達させる。 これを聞いた武田兵は歓喜に沸き上がり皆々武具を天に掲げて勝利を祝い、逆に上杉兵は絶望に表情を青くさせて武具を落としたじろいだ。 特に弥太郎は感窮まった声で泣き叫び、その場で迷わず自身の腹を切ろうとしてしまう。 だが戦う意味を失った上杉兵は慌ててそれを止めて、最後は昌景を始めとする多くの者たちに羽交い締めにされ何とか阻止される。 「止めるな死なせろッ!!謙信様を護れなかった我など既に生きるに能わぬッ!!」 「馬鹿な事を言ってんじゃねぇッ!!誰か縄を持ってこいッ!!」 結局、弥太郎は縄で縛り上げられて自決させない為に監視を付けるだけでなく、最後まで聞き分けない様子に上杉兵が頭を下げて止めさせる事態までなってしまった。 そして上杉兵の殆どの者が散り散りとなり、塩田城の周辺から逃げ出すか武器を捨てて投降し、謙信の死と共に上杉軍は崩壊する。 「勝頼様、織田が退いて行きますが如何いたしますか?」 「断じて手を出すな。それと同時に越中に入る織田軍にも同じだ」 また、この様子を見た織田軍は逃亡する上杉軍を追撃する事もなくば、味方した武田軍と合流する事もなく撤退を開始。 織田軍は一兵すら失わずに、信玄直々の御墨付きである登能と越中の統治権を得た。 「投降した者は無闇に殺すでないぞ。まとめて後方へ送れ」 「然らば謙信の骸の方は?晒しますか?」 「……否、手厚く葬る」 昌信の言葉に勝頼は暫く間を置いて沙汰を下す。 「宜しいので?これを晒せば一揆勢を味方に引き入れるは安いかと」 「晒せば某は一生後悔するだろう……今は越後侵攻の支度を整えよ」
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