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謙信の死から五日後、勝頼率いる武田軍は上杉家が統治していた北信濃を制圧しつつ越後へ侵攻を開始する。
勝頼にしてみれば五日などという無駄な時を過ごさずに再攻撃を仕掛けたかったのだが、捕虜の処遇と先の戦いで兵糧庫が燃やされた為の立て直しで致し方なかった。
だが、軍備支度の最中に聞き捨てならない情報が舞い込んでおり、兎にも角にも武田軍は早急な行動を迫られる。
その情報とは、上杉家が二分に割れたという内容である。
仔細を聞くに、元々意見の対立が多かった謙信の養子である上杉顕景と上杉景虎が春日山城内で内乱を起こしているとの事であった。
また景虎は北条家から送られた人質であり、本家の勢力を拡げるべく兵を挙げたと考えられ、同時に絶好の攻め時と心得る。
「進めぇッ!!北条軍も越後へ入る筈だッ!!その前に春日山城を落とすッ!!」
景虎が反乱を起こしているという事は北条家もそれを援護するべく軍勢を派遣するのは眼に見えている。
故に勝頼は重要拠点である春日山城と直江津は何としても確保すると息巻いて急ぐ。
そして行く道には、上杉軍の守備隊の姿は何処にも見当たらず静かなものであり、謙信の死が招いた結末だと誰もが疑わなかった。
「ぬっ、いかんなこのままでは隊列が延びきってしまう」
だが進軍途中、急いではいるものの後ろを振り返ると多数の味方を置いて行っている事を懸念して一度足を止める。
時は惜しく既に春日山城の眼と鼻の先まで迫っていたが、かの城は堅牢であり敵は浮き足だってはいるも兵力は必要であるが故であった。
何より連戦と強行軍により、兵に疲れも見え始めている。
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