一国二君

18/20
前へ
/761ページ
次へ
「景虎様ッ!!暫くッ、暫く御待ちをッ!!」 流石の家臣も景虎から出てきた顕景に家督を譲る発言には、仰天のあまりに横から割り込む。 そして殴り合う二人を引っ剥がして一旦落ち着かせる。 「何で殺そうとしている相手に家督を継がせる説得させているのですかッ!?少し落ち着いて下されッ!!」 「拙者は欲に捕らわれていたが、顕景の面を見てわかったッ!!あいつこそが、自身を血や汚名に塗れようと国を想う者だとッ!!」 「はぁッ!?はぁぁぁッ!!?」 だが景虎の意思は固く依然として顕景が君主に相応しいと言い切り、家臣は口を揃えて困惑の叫びを散らし頭を抱える。 「いやいやいやいやっ、景虎様も仰っていたではありませぬか!!こんな荒れた国は北条が治めた方が良いと!!」 「否ッ、一概にそうとは言い切れぬぞッ!!」 何としても顕景の家督相続など阻止したい家臣だったが、景虎は逆に肩を力強く握りながら説得を始めだす。 「我らはこの地に来て一年も経っていないッ!!故に越後で繋がりのある有力者は少く、簒奪に成功しても春日山城を守りきれぬ恐れがあるッ!!」 「その為に本家の援軍でしょう!!」 「それでは逆に、共通の敵を創ってしまい越後が団結する可能性が高いッ!!ならば、いっそ我らで越後を立て直し北条と貿易を結んだ方が本家の利となるッ!!」 家臣は全く予定外だった景虎の説得に苦悩し絶句してしまう。だが同時にその言が一理ある事も理解してしまった。 越後の内情は謙信のやり方により傾いてはいるが、比例するように軍事力だけは群を抜いている。もし本当に国人衆が団結してしまえば北条家にとって厄介な事この上ない。 更に景気立て直しには、それ相応の投資に多額の出費が言わずもがなである。
/761ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4492人が本棚に入れています
本棚に追加