汝は我

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上杉家が本拠地たる春日山城に到着した二人は、まず正面門にずらりと並び立つ兵の姿が眼に入った。 構えられる槍の刃は一人たりとも曲げずに真っ直ぐと天を突き、それからは戦意がピリピリと肌で感じ取れてしまうほどに伝わる。 秀満は門が開いた途端の威圧に気圧されて思わずたじろいでしまうも、光秀は何食わぬ顔で堂々と足を踏み入れだす。この後ろ姿が何よりも頼もしく映り、自身も気を引き締めて門の内側へ歩む。 「明智光秀殿、明智秀満殿。御両名とも遠路遥々お越しいただきました事、恐悦至極申し上げます。拙者は上杉家が宰相、上杉景虎と申します」 そして屈強な兵たちを従えて、上杉景虎が二人を出迎える。 「これはこれは、わざわざ景虎殿がいらっしゃるとは痛み入ります。こんなに兵まで動員してまで」 「織田家は大事な客人ですので。御二人の為に出来うる限りの防衛体制を整えさせて頂きました」 いけしゃあしゃあと物は言いようだなっと、秀満は心の中で悪態をつける。 どちからといえば、大人数に見送られながら牢に入れられる気分だ。 何よりもわざわざ門の出迎えだけで、完全武装の数百人規模を見せつけるなど、あからさまに軍事力をアピールされているだけである。 そして暫くの間、無駄に殺気立った兵を横目に流しながら次は広い間に案内されて待たされる。 中には無駄に煌びやかで値の張りそうな屏風も立っており、余程格下に見られたくはないのだろうと見受けられた。 「上杉景勝様が御入室なされます」 秀満は暇な時間を使い、屏風を値踏みしていると上杉家当主たる上杉景勝が姿を現す。
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