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越後を後にする二人は、先んじて和睦成就の折りを北陸方面軍を指揮する柴田勝家に報告すべく加賀の尾山御坊へ足を踏み入れる。
そして明智両名の無事帰還を聞いた勝家はこれを祝い宴の席を設け歓迎した。
だが宴とはいえ、柴田家内は越中と能登を任されたばかりの為に上杉軍残党狩りや帳簿の整理に朝倉家との取り持ちとてんやわんやであり、勝家と腹心の原田直政を合わせて四人だけである。
「ともあれ、此度の結果は御見事。流石は出世頭として上様から一目置かれるだけはありますな」
「柴田殿からそのような御言葉を頂けるなど恐悦の至りに」
上機嫌に笑う勝家は光秀の盃に酒を注ぎ、よほど嬉しいのか横に並ぶ直政の背を何度も叩く。
だが其もその筈であり、人材不足の上に内情厳しい両国の安定のために税を軽くせざる負えなく財政も不足。この状態で上杉軍まで相手などしようものなら苦戦は眼に見える故であるからだ。
そんな勝家を見ながら光秀は酒を飲む。そして淡々と飲み続け、あっという間に置かれる酒を飲み干す。
「おぉっ、光秀殿は酒豪であられるか。見ていて清々しき呑みっぷりよ」
この姿を見た勝家は更に気分を良くして次々と酒を注ぎ、光秀は迷うことなく一口で飲み続ける。
そして空になった器の底を眺め、盃を握りしめて口を開く。
「柴田殿、今日は酔いたい気分です」
「ほーっ!!善きかな善きかな、加賀の酒は旨いぞ!!」
勝家本人もかなりの酒豪という事もあり、その発言に手を叩いて喜んで酒や料理を続々と持ってこさせる。
「義父殿、この後も執務が残っておりますが」
「儂も酔いたくなった!!成政にやらせとけ!!」
「命じておきます」
その裏で佐々成政の仕事量が着々と膨れ上がるが。
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