4492人が本棚に入れています
本棚に追加
四人の宴は夜更けまで延々と続いた。
だが、途中で直政は成政に仕事を押し付ける為に席を外し、秀満もこのままでは酒に殺されると思い、明日の荷造りを理由にさっさと逃げ出す。
残った二人であったが、流石に夜まで飲むのに堪えた勝家は顔を耳まで赤くするも、光秀は一切として顔色を変えずに続けるので席を外せず冷や汗を流しながら眺める。
「……些か酔いました」
「あぁ、やっとか。もう酒も残っちゃいないから助かった」
光秀の口から酔ったなどと出たが、勝家は目の前には空になった数えきれない酒器の山と変わらない表情に反応を困らせつつも頷いた。
「時に柴田殿、酔った勢いにお聞きしたい事が一つ」
「聞きたい事?余興のついでだ、何でも言ってみろ」
「上杉家の事です。何故に謙信がここまで国内を荒らしたにも関わらず、加賀や越中では多発し越後でまともな一揆や謀反が為されなかったかどうお考えですか?君主がうつけにも関わらずに」
問うた内容は謙信の独裁政権に対するものであった。そして意味ありげな付け足しに勝家の手が止まる。
「ふっ、昔に上様を裏切った儂に聞こうというか」
「不快に思われたのなら御容赦下され」
「……いや、大事ない」
勝家は過去に謀反を起した事がある。
未だ信長がうつけと呼ばれていた頃、それを廃して実弟の信行を当主に推すべく兵を挙げるも、最後は当主と見据えた者は殺されるという人生に於ける最大の汚点を残していた。
それを蒸し返すような物言いだが暫くして小さく笑う。酔わせてから聞くつもりで大量の酒を飲み続けていたのだと思ったら、よくもまぁそこまで体を張ったものだと。
最初のコメントを投稿しよう!