汝は我

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後日、光秀と秀満は尾山御坊を後にし、居城に戻るべく出立した。 ちなみに勝家は二日酔いに頭を痛めており、対する光秀は誰よりも酒を喰らっていたにも関わらず何食わぬ顔でいる。 「……光秀殿は酒呑童子か何かの生まれ変わりか?」 「如何しましたか?」 「あー、内蔵を大切にな」 そんな勝家の心配など知らぬまま足を進め、翌日には近江へと入る。 つい一月前までは浅井家が支配下であったが、降伏に伴い国境を解放し織田木瓜の旗も見受けられた。 また、浅井家は本拠地たる小谷城の廃城を決定され北近江の支配権は羽柴家へと移譲される。 「時に御存知でしたか?羽柴殿が今浜の地で城を建てておられるようです。挨拶に行きますか?」 「羽柴殿が……まぁ、無視して行くのも外聞が悪かろう」 「草履取りから城持ちですか。後世に残る絵巻物が如し大出世ですな。どのような方なので?」 「ゆうても金ヶ崎の折しか知らん」 羽柴秀吉、近江という同じ地を治める両者ではあるも、光秀は朝廷との取り持ちに暇がなく秀吉も浅井家を止めるに手一杯であり面識事態は少なかった。 正直言って面倒ではあるが、出世頭とて光秀は織田家内で新参者の域を出ない。なので人脈は大事にしたい処である。 「そいえば、今浜の名は長浜に変わったようです」 「長浜?あぁ、信長様の名を肖っているのか。上手いことやるな」 「我らがやったら余計な妬みを買いそうですね。その辺りが羽柴殿の強みなのかも知れませぬな」 そして立ち寄る事にした二人は築城現場へと進路を変えて秀吉に挨拶へ向かう。
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