廻りし歯車

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織田軍の長島攻めが決定され、幾万の軍勢が地平線を埋め尽くし歩む足は地響きを鳴らす。そしてこれに誰よりも驚いた人物が摂津の国に居た。 摂津の国に建つ石山本願寺で浄土真宗の指導者たる本願寺顕如が開いた口が塞がらんと言わんばかりに立ち尽くす。 顕如にとって願証寺の蜂起など寝耳に水であったのだった。更に証意から送られた書状の内容は、延暦寺を燃やした仏敵たる織田家に屈した本願寺と縁を切るとの事であり頭が痛くなる。 「座主ッ!!織田の使者が願証寺の件について問いたいと詰めかけておりますッ!!」 「加賀といい長島といい……武器を取る前に相談ぐらいせんかぁいっ!!」 事態を重く見た顕如は、何よりも迅速さを重視して腹心である下間頼廉と十数人足らずの従者だけで長島に布陣中であった織田軍に合流する。 だがそこで、改めて現状の悪さを知らしめられた。僧兵事態は数千人程度であるのだが民を見境なく扇動し尽くして、まともに武装すら出来ていない数万人もの数が募っていた。 しかも証意は、今回の一戦は顕如の名に於いて織田家を討つという檄まで飛ばして人を集めた挙句、初撃で信興を殺させる事により後に退かせないという性質の悪さまで発揮する。 もはや民たちは何の為に戦っているのかも判らなくなってしまい、ただ目の前に吊るされた餌に喰いつき自らの考えなど持たず良い様に使われていた。 信興の死に続き見境ない略奪行為に、火に油を注がれた信長は血管が切れそうなほど怒り、全軍に砦に居る者は一人残らず撫で斬りにせよと命を発する。 想像以上に見ていられぬ事態に顕如は、信長に長島の砦に対して降伏勧告を行いたいと悲願。そして一日だけの猶予を与えられて顕如と頼廉は行動を開始した。
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