廻りし歯車

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本願寺一同は、一向一揆の籠る篠橋、大鳥居、屋長島、中江、長島城の五つの拠点に乗り込んで降伏勧告を行った。 そして勧告を耳にしてやっと騙された事に気づいた篠原と中江の砦は、民が願証寺の僧を捕えて投降。信長はこの二つの砦の降伏を民のみ認める。 捕らわれた僧は一人残らず処刑を下して晒し、また取り逃がす事の無い様に民に紛れる僧を密告した者には褒美を与えるとして内部分裂を誘発させた。 その磔にされた僧の骸に顕如は手を合わせて念仏を唱え、信長は横に並び立ち前だけを見据える。 「顕如殿、この長島の地は尾張と伊勢を繋ぐ要所であり、熱田と津島にも近すぎる。武田の問題もあり我らは一刻も早い鎮圧が必要なのだ。受け入れろとは言わぬが理解はして頂きたい」 「事を荒がせたのはこっちや……だが、思うところは隠せぬが本願寺は織田家と戦乱を歩むと決めたさかい」 「我ら二人が並んでいるのこそ奇跡であろう。少なくとも、貴殿の思いを無下にする気はない」 後日、織田軍による降伏勧告を無視した砦に総攻撃が開始された。 最初の攻撃目標は大鳥居。かの砦に二万もの兵が取り囲んで矢鉄砲を撃ち込み、更に水軍による大筒の艦砲射撃すら行う一方的かつ徹底的な攻撃により、僧兵や民共々為す術もなく倒れ逝く。 砦は燃やされ半日で陥落し、生き残ったのは数える程度の僅かばかりの人数だけであり、この有り様を見せつけられた他の砦に戦慄が走る。 次に標的にされて殺されるのは自分やも知れず、同時に織田の陣には顕如が居り降伏したら命だけは取られないかもしれないと浮ついたのだった。 そして砦内で摩擦が生じ空中崩壊してゆき、証恵の妻である如栄が密かに投降までしようとする事態まで発展する。
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