4492人が本棚に入れています
本棚に追加
1574年1月、一向一揆を終えて刀狩り命も軌道に乗り朝倉多方面攻撃の傷跡も癒え始め、北陸の占領地も安定の兆しを見せだす。
そんなある日、織田家臣である森長可は謹賀の挨拶として徳川家臣の酒井忠次に親書と富有柿を使者に持たせて送る事とした。
二人は躑躅ヶ崎館襲撃の折から交友を持っており、その事は両家内でも有名であったのだが送る最中にとある事件が引き起こる。
使者が忠次の屋敷が建つ浜松まで行く最中、徳川領である岡崎城付近に到着して関所を通ろうとした時、織田家である証明を示したにも関わらず門番に引き留められる。
しかも使者は主君から預かった親書と富有柿おも奪われてしまい、挙句に最後まで関所を通る事が叶わず織田領へ帰らざる負えなかった。
そして、この旨を後見人の林通安に報告した後、使者は主君の名に泥を塗り合す顔が無いとして遺書を固く握りしめたまま腹を召してしまう。
「徳川ァァッ!!ぶぅっつ殺ぉぉうううぅすッッ!!」
当然としてこの話に主君の長可は怒りに任せて暴れ叫び、吊りあがった両目が血走って人間無骨を手に取り部屋の全ての物を叩き切る程であった。
「……落ち着いたか。勝蔵よ」
「通安の爺様ッ!!俺は岡崎城へ行くぞッ!!」
使者の死の話は通安が直接伝えに赴いており、長可は詰め寄る様に槍を握りしめながら闘志を燃やす。だが、そんな様子を見て小さく首を横に振られる。
「行けば森家は御取り潰しを下されよう。さすれば可成との契りを破る事となるぞ」
「~~ッう!!ならばどうしたら良い!?俺がまだ青いのは解かっている……だが死んだ家臣の墓標に追いやった奴の首を捧げてやらねば浮かばれまい……」
「一度、信忠様に御預けせよ。我らが殿を信じてな」
最初のコメントを投稿しよう!