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1576年6月、織田家による中国地方への攻勢が開始される。
これの総大将には羽柴秀吉が一任され、まず初めに播磨の国へ侵攻して順調に事を進める。そして毛利家の支配下である者は徹底的に叩き潰し、中立として揺らいでいた者には調略により取り込み、瞬く間に佐用郡の上月城まで占領。
更に兵力にも余裕がでて但馬への侵攻も同時に開始、岩洲城に竹田城と続けざまに制圧に成功。その間、僅か二ヶ月足らずという短期間で播磨のほぼ全域と但馬の1/3を手中に治めるという電撃戦を成功させる。
「クッハハハハハッ!!存外やりおるではないか、猿め!!」
この報告を聞いた信長は高笑いして喜び褒め称える。そして褒美として秀吉に茶の湯に使う乙御前釜を与えた。
「わーい、信長様から褒美を貰った」
「んぁ?何だそれ釜か?こんな大戦果だってんのに釜一つか?」
「この釜でご飯を食べて頑張ろうって意味じゃない?ふっくらした形が愛執誘うじゃないか」
秀吉は褒美である乙御前釜を両手で掲げてくるくると回っていると、羽柴家臣である蜂須賀正勝が眺めながら口を尖らせる。
そんな二人は釜に米を盛りつけようとしたら、秀吉の実弟である羽柴秀長が慌てて飛び込み乙御前釜を奪い取ったが、勢い余って顔面から地に擦り倒れてしまう。
「……大丈夫、小一郎?何してるの?」
「な……何してるは此方の御言葉です!!この釜は一国一城の価値があるのですよ!?」
秀長は乙御前釜の価値を必死に熱弁するが、肝心の秀吉はいまいち伝わらず口を開きっぱなしに首を傾げるばかりであった。
そしてその光景を見て、中国攻めの際に羽柴軍に服従していた黒田孝高は真顔で眉を顰める。
「付く相手を間違えたか……」
「人生そんなものですよ、官兵衛」
そんなボヤキを羽柴軍軍師たる竹中重治が適当に流す。
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