廻りし歯車

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前の時代に於いて中国攻め最大の障害は裏切りによる羽柴軍の包囲もそうだが、何よりも本願寺の存在でもある。 播磨の南に位置する明石海峡の制海権を毛利家と本願寺が制圧していた事などであり、またこれが原因で謀反にも繋がった織田家家臣の荒木村重も裏切る要因がなくなったので留まった。 しかし小寺政職は毛利家に唆されて謀反を起すも、元家臣の黒田考高に二日であっさりと鎮圧される。挟撃としても中途半端であり、毛利家に餌を釣らされ余所者の秀吉が播磨で好き勝手する姿に嫉妬しただけの行動であり当然の結果である。 ともあれ羽柴軍は播磨と但馬の両国制平定を果たし、次いで毛利家が支配地たる備前の国に攻撃を開始する事となり、羽柴軍一同はこの大国を如何にして崩すかの軍評定を開く。 「さてっ、単純に石高から換算した毛利家の最大兵力はざっと五万は考えられます。対して我らが信長様から御預かりしている兵は全てを引っ繰り返しても二万です」 そして孝高が地図を広げながら毛利家の支配地を睨み付けて説明を続ける。 「次いで、我ら織田家は東の武田家との戦が続く中、大規模な援軍要請は可能な限り避けた方がよろしいでしょう」 「きっついなぁ、その気になれば倍の兵力を出せる相手に正面から殴り込むなんてな」 「しかしそれを成せば羽柴家は織田家の筆頭家老も夢ではありませぬ。そこでまず如何にして攻めるべきかの話を……んっ?竹中殿は何処に?」 途中で軍評定に重治の姿が無いことに気が付いた孝高は辺りを見回し、それと同時に秀吉はゆっくりと席を立ち陣幕から出ていく。 「……秀吉様?」 「あぁ、気にするな。猿の事も半兵衛の事もな」 首を捻る孝高だが、正勝は諭すように言って止めた。
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