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今まで織田家は武田家との戦いで大きな勝利を挙げた事がなかった。
岩村城の戦いでは信忠が秋山信友を討ち取るも、それ以外は三方ヶ原の戦いでは佐久間信盛を派遣するが敗北。また明照城、明智城、飯羽間城等々を始めとする多くの城を奪われたりと岐阜での戦いでも奮っていない。
織田家臣が慎重になりすぎるあまりに徳川家を見捨てるも止む無しと話が出てしまうが、当然として見捨てられる方はたまったものではない。
そもそも徳川家が武田家を防いでいた為に織田家は西へ勢力を広げられたのだ。徳川側にその認識あるが故に一層として反感を招く。
「父上、使者殿の申すことは尤もであります。ここで長篠城を見捨てれば、それ以上のものを失う恐れがあるかと」
徳川家が万が一同盟を破れば、周辺国の地形など得難い情報を武田家に渡ってしまい其こそ眼も当てられない結果となる。
信忠はそれを危惧して援軍の派遣を信長に具申した。
「ふむっ……武田と何れにしろ避けれぬ定め。此処で雌雄を決するも一興か」
「おぉっ!!信長殿、さすれば長篠城に援軍を頂けるので!?」
顎髭を撫でて武田家との戦いの意を述べる信長に徳川家臣は歯を見せて喜ぶ。
「うむっ、織田軍は三万の兵をもって援軍に向かう。総大将は信忠、お前がやれ」
援軍の約束を言う信長だったが、それに続いて出てきた内容に室内に居る誰もが声を出して驚き、信忠もまた例外でなかった。
新当主として政務は奮っていたが、三万という織田家の半数を占める軍勢を指揮せよとあまりに急であるからだ。
「父上は如何に?」
「毛利と上杉の動向もある。儂は中央に残り場合によっては予備軍を動かす」
あくまでも信忠に一任する気であり、自然とざわめきが広がる。
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