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武田軍が兵を進め両軍対峙し半日が経過しようとする中、徳川領の岡崎城でとある人物が仏教面で座していた。
「信康様、本隊は設楽ヶ原に布陣し武田軍と睨み合っている様子です」
その人物とは家康の嫡男たる徳川信康。彼は此度の戦いでは参戦せずに岡崎城の留守を任されていた。
そして家臣の報告に対して、顔を両手で覆いながら静かに肩を震わせる。
「……ふふっ、ふぅはは……ふぅはははははははッ!!こいつはいい、想定通りの筋書きだッ!!」
信康は笑った。顔を覆っていた手を大きく振り上げて狂喜乱舞が如くに高らかに笑いだす。
「でしたら、例の件を推し進めるので御座いますか?」
「ふぅふふは、当たり前だッ!!これで織田という呪縛から解放される……これで徳川は新たな門出に羽を広げるのだッ!!」
笑いの止まらない信康は刀を抜いて振り上げて言葉を続ける。
「この徳川岡崎三郎信康が煌々として宣言するッ!!今この時をもって、主君たる家康は隠居とし、我が徳川家を継ぐッ!!」
「岡崎城兵2,000名、信康様の家督相続を心より御祝いも申し上げます」
飛び出した言葉は家康の廃止と共に自身が家督を奪うとの旨であり、実質的な謀叛であった。
それに対して信康の家臣は頭を下げて祝いを口にしだし、これに加担の意を示す。
「よいかぁッ!!これは簒奪に非ず、未来を掴む正義の行為であると心得よッ!!」
「御意。家康様は織田に屈した売国奴、正当性は此方に御座います」
家臣の後押しに信康は大きく頷く、今一度息を吸い上げる。
「我らは織田家との同盟を破棄、同時に武田家と同盟を締結する事をここに宣言するッ!!」
そして織田家とは縁を切り武田家と結ぶと豪語した。
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