決別

14/17

4492人が本棚に入れています
本棚に追加
/761ページ
「主、信康様より勝頼殿へ御報告致します!!我ら徳川家は新たな道を武田家と共に歩む所存にあります!!」 設楽ヶ原に謀反の報告が入ったと同じ頃、武田本陣にも信康から送られた伝令兵が飛び込んでいた。 そして報を聞いた武田家臣は声を出し歓喜を挙げて武器を天に掲げる。この歓声に伝令兵も口元が緩んだが、続けて報告しなければいけない事もあり言葉を続ける。  「……しっ、しかしながら、我ら岡崎兵は千軍万馬の勇士でありながらも僅かに2,000名。織田軍の退路を塞ぐは可能ですが出陣は難儀しております!!」 「むぅ、それは……口惜しい」 だが信康の謀反は家康が居る浜松方面に悟られぬように極秘裏で進めていた為、動かせる兵は必要最小限となっており挟撃は難しいとの旨であった。 さらにいえば、密告を防ぐ為に情報統制が徹底しすぎたせいで事情を知っている者も少なく下の殆どは理由も解からずに街道を封鎖しているのだが、これは無駄な弱みを見せない為に伏せる。 これ対し武田家臣は思わず唸り、その最中に勝頼が静かに立ち上がった。 一歩また一歩と土を踏み近づいてくる足音に伝令兵は小さく震え、勝頼はその目の前で動きが止まる。 「そう気に留め為されるな、織田の三万や四万など我ら武田が叩き潰してやろう。貴殿らはしっかりと後ろを固めて頂ければ此方も安心ぞ」 勝頼は膝を折り伝令兵の肩を二、三度叩き笑い顔を見せられ、その様子に肩の荷が下りたように深く息を吐き出した。 「それでは信康様に御伝えに戻ります故、此れにて失礼致します!!」 「うむっ、気をつけて行かれよ」 改めて深々と頭を下げた伝令兵は足早に武田本陣から出て行き、この瞬間を持って武田軍と謀反軍の同盟が相成った。
/761ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4492人が本棚に入れています
本棚に追加